1章何もない of 半分ずっこ

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第1章

何もない


 旅に出たまま暮らしを始めた4人。

 出てきてしまった場所のことを頭の片隅でちらつかせながら、津屋崎という地で「俺たちでこの町を元気にしよう!」とまちづくりの会社を立ち上げる。漲る気持ちとは裏腹に、仕事も必要なモノも何もない。会社員としてキャリアを積んできた山口さんも「お仕事に励んで下さい」と言い放ち、出て行ったきり帰ってこない。

 3人は手の付けようのない「何もなさ」を打破するため、町の中を歩いて回り、ご挨拶とともに自分たちの思いを町の人に話していった。その中で一線を画す女性と出会った。津屋崎の「藍の家」という築100年以上の家の保存活動を行っている柴田富美子さん。町の人のほとんどが怪訝そうな表情で話を聞いていたが、柴田さんは「あなたたち、よく来てくれたわね」とにっこり笑い、家に上げてくれた。その言葉を聞いた途端、張り詰めていた緊張感が解け、「ありがとうございます」という言葉だけがこぼれ落ちるように出てきた。

 たった一人だっていい。私たちがここの場所に居ることやその理由を理解し、肯定してくれる人がいるとそれだけで救われる。3人は安心し、事務所で町を歩き廻って感じたことを口にし始めた。

 「人が住んでなさそうな空家が多かったね・・」
 「ぽつりぽつりとお店もあるけれど、あまりお客さんがいなかったな」
「私たちが歩いているとジロジロと見られたよね。若い人がいないからかな」
 「そうそう!若い人がいないよね。何でだろう?」


 この町には、若者がいない。
 この事実を私たちは掘り下げ、その理由を探した。
 雇用が不十分、機会の少なさ、都会への憧れ・・・納得いく理由が見つからず、この場所での若者と反対の行動を取っている自分たちの場合を考えた。私たちも津屋崎の若者と同じように故郷を離れ、この場所に来た。雇用がなかったわけでも、機会が足らなかったわけでもない。きっと・・・故郷では自分たちが信じられる未来を描くことができなかったから。

 「環境は異なるにせよ、津屋崎の若者も同じことなのかもしれないね・・」

 明言は誰もしなかったけれど、しばらく流れた沈黙は、「きっとそうだ」という頷きを各々の中にもたらしていたように感じた。

 「ねえ、もしそうだったら私たちがここで未来を創造できれば、若者は都会に出ないということだよね」
 「そうだ!未来創造・・・・とりあえず思いつくものを描いてみよう」

 3人は広告の裏側に何が未来創造なのかを書き出し、その中から「今私たちにできること」を抽出した。

 その結果、私たちは自分たちが津屋崎での日々を伝えるブログを書くことを決めた。

 「未来創造」という言葉からは、連想し難く、あまりにも容易なものに見えてしまうけれど、私たちがここで暮らし、感じることや試行錯誤することが未来創造への過程であると信じた。
















































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「 ・・・。 」