2章わたる1節 of 半分ずっこ

半分ずっこバナー.gif

第二章 塩倉庫

1節:コンサート


 「や、やります!」

 みんなが彼の顔をのぞき込むようにして、きょとんとしている。

 (なにが起きたんだろう。なんでみんなしてオレの顔を見ているんだろう。まさかオレ、またなんか言ったのか、そうなのか…勘弁してくれよ…)


 彼は今置かれている状況をまったく飲み込めず、ただ他人事のように部屋の中を見渡していた。昔からそうだった。彼はこんな風にみんなで話をしている時、決まって何か他のことを考えてしまう。その場にいなくなってしまう。話を聞いていない訳ではない。ちゃんと聞いている。ただほんのちょっとだけ退屈すると、体中がそわそわし始めて、ほんの数秒、いや一瞬、どこかへ行ってしまう。そんな時、頭の中で何かが弾けてしまう。

(いまオレ…やりますって言ったのか?)



「キムラくん、よう決心してくれんしゃったね。“塩倉庫”もよろこびんしゃろーね」

 彼はシバタのおかあさんの声で我に返った。おかあさんは一人ニコニコして、彼の顔をやさしい眼差しで眺めていた。藍の家のシバタさん。築100年を超える国登録有形文化財 “藍の家”。この立派な古民家を生き返らせた、藍の家保存会の代表を務めるのがシバタのおかあさんだ。 彼はこの人が大好きだった。埼玉から移住したての頃、生活のすべてを面倒してくれた。彼にとってまさに津屋崎のおかあさんである。

 (シオソウコ…塩ソウコ?…塩倉庫!)

 彼はかつて塩田があって栄えたこの町の、ボロボロに朽ち果ててしまった塩倉庫を、彼は何とかしたかった。

「おかあさん、みなさん。ぼく、あの塩倉庫でコンサートを開きたいと思っているんです!」

(言っちまったぁ~!)

























DSC_0004_R.JPG
シバタさんときむにぃ